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代表インタビュー

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まなびと理事長中山の考えを知っていただけるインタビューです。


自分を見つけるまでの“待ち時間”が
大切にされる社会をめざして

僕は子どもの頃、学校でも家でも、自分の居場所が見つけられず苦しんでいたと思います。
中学校のときクラスメイトとの関係がうまく行かずいじめられていたり、
高校生のときに両親が離婚して母親に引き取られたのですが、
なかなか家で勉強できるような環境ではなかったり。
高校の時に吹奏楽部に所属していたのですが、
その部活が自分の中の数少ない居場所だったかもしれません。
部活の先生から言ってもらった「おまえにしかできないパートだから」という言葉が支えになって、
学校に通えていたように思います。
 
それでもなんとか頑張って大学は入ったし、その後5年間の大学生活の後、
大手企業からの内定ももらったのですが、最後の卒業論文がどうしても出せなくて。
書こうとはしてみるものの、「これは自分が書きたくて書いているものではない」と
何度も手が止まってしまって。
結局卒論の提出ができなかったために大学の卒業が叶わず、
内定も辞退せざるを得なくなりました。
 
卒論もそうでしたが、その先にある社会をイメージしても、
そこにあるのが本当に自分がしたいことなのか、
一度立ち止まってしまったら、すべてが閉塞しているように感じられてきて、
そこから何もできなくなってしまった。
 
それからしばらくは家もろくに出ず、何をするでもなく、ただただぼーっとして過ごしました。
でも、時間はあった。あるとき、何を思ったのか地下室からスコップを持ってきて、
自宅の裏にある雑木林に穴を掘り出しました。来る日も来る日も、
気づけば1か月間穴を掘っていました。
後から考えてもなぜそんなことをしようと思ったかはわかりません。 
 
でも当時、父と住んでいたのですが、何も言わずに父が「待っていてくれた」ことが
とても大きかったのだと、振り返ってみて思います。
僕が「まなびと」を通じて、子ども、外国人、大学生など、
一人一人がやりたいことを見つけられるようになるまでの
“待ち時間”的な場所をつくれたらと考えるようになった原点が、そこにありました。
 
「何かができるから、誰かの役に立つから、その場所にいていい」のではなく、
何者でもなくて、何ができるかもわからないけれど、自分なりに試行錯誤したり、
周りの人と影響を与え合ったりする中で、自分のできることやしたいことに
気づいていく過程があるのだと気づけた瞬間だったのです。
 
もうひとつ自分の体験で大きかったのは、タイでゆっくり過ごしたことです。
「自分がやりたいと思ったことは、どんな小さいことでもトライしてみたらいいんだ」。
穴を掘って以来そう思えるようになった僕は、ランニングをしたりフットサルをしたり
スノーボードをしたり、とにかく今までやってこなかったことにチャレンジして、
その都度新しい発見と出会っていたのですが、
ひょんなことから海外旅行でタイに行くことになりました。
 
そこで、想像を超える価値観の違いに出会いました。
自分が子どもの頃から言われ続けてきた「一番を取って、いい学校に通い、
いい会社に入ったら、いい人生が待っている」とはまったく別の生活観や働き方がそこにはあった。
でも、こういう幸せの形もあっていいんじゃないか。そんな風に感じ、とても心地がよかった。
 
「まなびと」は、多様な価値観や生き方に触れられるような出会いを届けたい、とうたっていますが、
それはかつての僕のように、まだやりたいことが見つけられず模索している人に向けて、
“居場所”や“待ってあげられる時間”をつくれたらという気持ちから始まっています。
 
そして「見つけたい」という思いは、子どもも大学生も留学生も障害のある人も子育て中の人も、
きっと子どもから大人まで連綿と続いているものだと思っています。ですから、
「まなびと」は地域にいるみんなにとってアクセスできる場として、幅広く開いていきたい。
子どもを対象とした学童保育や遊び場づくりも、外国人を対象とした日本語教室も、
障害のある子ども向けの音楽教室も、地域の人々が一緒にごはんを食べながら
交流するちいき食堂の活動も、その原点・原動力はいつも同じです。
 
ひとりひとりにとっての、やりたいことが見つかるまでの
“待ち時間”が大切にされる社会をつくりたい。
「まなびと」はその思いを胸に、多様な学びの場をつくる活動を
今後も推進していきたいと考えています。
 

理事長
中山迅一(なかやま・ときかず)